薬膳とは

日々の食事、毎日の献立が薬膳、食=薬という古くて新しい知恵。

薬膳とはいったいどんな料理のことでしょうか?
皆様はどのようなイメージをお持ちですか?
「特別な漢方食材を使った中国料理」このような印象をもたれる方も多いと思います。
ご家庭で献立を考えるとき、「今日は子供がお腹を壊していたから揚げ物はやめておこう」とか、
「スタミナをつけたいからお肉かな」とか「寒いから身体を温めるお鍋にしよう」などなど
体調や季節で献立を決められたりすることはありませんか?
知らず知らずのうちに皆様が日々実践されている、これぞまさしく薬膳の考え方なんですよ!
そうなんです。薬膳は決して難しいものではありません。特別な調理技術なども要りません。
自分や家族の体質を知って、季節を感じ、適切な食材を使うこと。
たったこれだけでいいんです。
どんな体質にはどんな食材が適切なのか、食材の効能を知ってしまえばいくらでも応用が利くのも
薬膳の素晴らしいところです。
日々の食事、毎日の献立が薬膳。
食=薬という古くて新しい知恵。
まずは自分のために、そして家族のために。
このような食卓がひとつ、またひとつと増えていくことを願ってやみません。

医食同源の食文化

その土地で採れる食材を活かし気候風土にあった食文化

医食同源の食文化はどうやってできたのでしょう?
原始社会の初期、人々の生活はただ共同で食物を得てそれを食べ、なくなればまた取って食べるというだけでした。
しかし生活の中で野生の草木や果実、根、茎などを採取して食するうちに時々下痢や嘔吐、
はてには死に至るといった重篤な事態に陥ることもしばしば経験します。
そうした事の繰り返しのうちに、人は次第に自分たちに有毒や無毒のものを識別していくようになりました。
病気にかかって苦しんでいるときたまたま食べたものから症状が軽減したり治癒したりという体験などを
集積していくうち疾病治療に有益な食べ物をそれこそ身を持って体験することになります。

中国古代から今日まで伝わった独特の食文化

「医食同源」の考え方はこのような背景に支えられて生まれた理論です。
そして親から子へと「こんな症状のあるときはどんな食べ物が有効か、反対によくないか」を代々伝え続けていきました。
普通の中国人が、食材の持つ効能に精通していて、それを体調や季節、疾病に合わせて取り入れ日々の食事を作ることが
日常になっています。
日々食卓に上る普通のお母さんの献立に自分や家族の体調を整える食材または生薬または調理法を用いる。
人はなんら抵抗なくこの"おふくろの味"で体調を整えている。
薬膳とは特別なものではなく、日々の食事がまさに「薬膳」なのです。

では薬膳は中国料理独特のものなのか?

いえいえ、決してそのようなことはありません。世界各国、どの国の料理も、地元で取れる食物を活かしてその国の風土や気候に合わせた薬膳料理があります。
韓国は中国医学の影響を受けながら独自の「韓医学」が発展し、なつめや高麗人参など韓方食材を使った料理や伝統茶で
体調を整えています。
インド料理に使われるたくさんのスパイスは、薬としての働きも兼ねていてアーユル・ヴェーダ(インドの伝統医療)の
考え方が根付いています。
インドのお母さんは子供の体調に合わせてスパイスの配合を変え、身体を温めたいときはこれ、
食後の消化を助けたいときはこれというような目的をもってスパイスを選び料理に取り入れます。
タイやベトナムで料理に多用されるたくさんの生ハーブには漢方生薬と同じものがたくさんあります。
料理やお汁粉、甘い餡にして食べる緑豆や蓮の実は暑い気候のせいで身体にたまった余分な熱の排出や疲労回復、
滋養強壮の働きを持ちます。
こうして各国、その土地で採れる食材を活かし気候風土にあった食文化で健康に豊かに生きていく工夫をしています。