中医学(正式には中国伝統医学)は中国4000年以上に渡る疾病との闘いの歴史により築かれた中国人の知恵と尊い経験の積み重ねによって発展した医学です。
古代の書にあちこちの登場する中国伝説の人物「神農(しんのう)」はその昔、自らの身体を実験台にして一日100種以上の草木を嘗めては70の毒にあたり、茶葉を噛んでは解毒したという実験を繰り返し、身体にとって薬となるものと毒となるものを区別したそうです。
神農の人間愛に裏打ちされた人々への献身をたたえ、後世の人々が後漢時代に編集した中国最初の薬用植物学の書に
神農の名前を取って「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」としました。
この書物は後々の中医学の発展に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。
さて、[中医]の本当の意味をご存知ですか?
「中国伝統医学」の略?
西洋医学の医師と相対して「中国医学の医師」という意味?
陰陽、気・血・水のバランスが取れた状態であるとき、人は健康でいられます。
この状態を中医学において「中庸(ちゅうよう)」と言います。
中医とは「中庸になるための医学」という意味なのです。
どこか体に不調が起きると、対処療法で治療する西洋医学とは違い、
その時の季節や天気、その人の食欲や睡眠などの生活の様子、
脈の打ち方や舌の状態、おなかの柔らかさなどの体の状態をトータルでみて、不快症状の原因をつきとめる。
標(ひょう)=今出ている不快症状を取り除き、
本(ほん)=根本原因から治す。
漢方薬を飲むことだけでなく、その人の体質に適した食事、生活養生で崩れたバランスを整える。
本当にバランスの取れた姿=中庸を目指す。
これが中医なのです。
一、人間が自然といかに調和を取り合って生きていくかということ。
二、病気の原因、性質、場所を見極め、
その上で患者の体質を判断しその個々にあった治療を施すこと。
三、「未病を治す」という考え方があること。
未病とは、病気になる手前、病気へと向かう状態。
即ち、 検査結果に異常がなくても様々な不定愁訴を訴える「半健康」状態のこと。
四診合参で総合的に情報を集めます。四診とは、
望診(ぼうしん)・・・患者の顔色や表情、体型、舌などを観察すること
聞診(ぶんしん)・・・患者の声、話し方、匂いなどに注意を払うこと
切診(せっしん)・・・患者の脈やお腹、痛みのある部分などに触ること
問診(もんしん)・・・患者の痛みの自覚症状や疾病期間、普段のお通じや睡眠、
食欲、女性なら生理の状況などを尋ねること。
中医師は、患者が診察室に入ってきたときから注意深く患者さんの顔色や表情、話し方の勢いなどを観察し
さらに患者の訴える自覚症状と重ね合わせます。
そして、舌象や脈象で診断・処方を決定します。
例えば同じ頭痛がお悩みの患者さん2人に処方するお薬は同じ症状だからといって同じ処方とは限りません。
その人それぞれの根本にある原因が違っていれば処方は違って当然だからです。
舌診とは、舌は経絡で五臓六腑と直接または間接的につながっているので、
今現在の身体の状態を判断するのになくてはならない診断方法です。
舌の状態から判断できることは無限にあります。
気血は不足してはいないか、水分代謝はうまくいっているか、
身体が熱をもっているか、反対に冷えているか、血の流れはどうか、などなど。
舌のどの部分に特徴があるかで身体のどこが悪いかさえ分かるんですよ。
具体的には舌の大きさ、歯型の有無、色は白っぽいか紫っぽいか、
苔が付いているか、どの部分に厚く付いているかなどを見ます。
脈診の方法をお教えしましょう。
左手の親指の付け根の部分からずっと下にさがってください。
手首の所まで来たら骨が一つぽこんと出ている部分がありますね。
ここに右手の中指の腹を当ててください。
この時、右手の人差し指、中指、薬指を3本ぴたっとくっつけておきます。
そのまま指一本分、内側へずらします。
ここが脈を取る場所です。
右手の脈を取る場合は手を逆にしてください。
手首の付け根から下に向かって「寸・関・尺」という3ポイントがあり
それぞれ五臓(心・肺・脾・肝・腎)と対応しています。
左手の寸は「心」の具合を、関は「肝」の具合を診ます。
右手の寸は「肺」を、関は「脾」を診るといった感じ。
両手の尺のポイントはともに「腎」を表します。(右手の尺は腎陽、左手の尺は腎陰)
どこに特徴があるかで五臓の異変を感じ取ったり、
脈の深さや打つ速さ、勢いなどから28種の脈象の法則に従い、体の内部の病変を察知します。